彼が意地悪なのは、少しだけ知っていた。 けれど、それは決して悪意のある意地悪ではなかった。 「んっ……あぁっ……」 熱が、下腹部から感じられた。 進さんが下腹部の突起をいじりながら、私の中を突く。 「ひゃっん……んっ……あ」 あまりの快感に、何も考えられなくなりそうになる。 進さんの汗ばんだ真剣な表情に、欲情する。 進さんのモノが私の中で、動き、そして、その動きと一緒に突起を弄られる。 二つの快感に、頭がおかしくなりそうだった。 「あっ……ん、あぁ…駄目で…すっ。そんなに…される、とっ…!」 荒くなっていく私の息遣いをみて、進さんは動きを止める。 ピタリと止んだ行為、快感に私は驚く。 「なにが、駄目なんですか?」 わざとなのか、無意識なのか。 進さんは、私をじらし続ける。 実に楽しそうに。 本当に意地悪だ。 急に止められた動きに、私の下半身はひくひくと続きをねだる。 「す、すむさんっ…じらさないで…っ下さい」 涙ぐむ私を見降ろし、進さんは実に楽しそうな顔をする。 ぺロリと唇を舐める仕草にさえ、今の私には毒だ。 下半身が、勝手に疼いてしまう。 「じらしてなんかいないですよ?はるさんが、駄目と言ったから、やめたんです。本当はどうして欲しいんですか?駄目なんじゃないんですか?」 こういう時だけ、『はるさん』って他人行儀に呼ぶこの人の言葉遊びが私は嫌いだ。 私の中で熱い物が少しだけ、質量を増したような気がした。 進さんが、やんわりと私の突起を撫でる。 じれったいその動きに、自然と腰が動いてしまう。 「もうっ……あっ……ん、やっぱり、だ、駄目じゃない、です…っ!」 羞恥心を捨て、私は進さんに行為の続きをねだる。 進さんは、満足したように微笑むと、続きを再開する。 本当に、意地が悪い。 私を焦らしては、強請らせ、そして、その様子を見て喜ぶ。 「ふぁ……ん、あっあっあっ…!!」 私はあっという間に、達してしまった。 進さんも、小さく声を上げ、私の中に暖かいものを流し入れた。 あれだけ、意地悪だと心の中で小さな悪態をついたとしても、快感には逆らえないのだ。 なんて、情けない私。 「進さんって本当に意地悪ですね!!!」 私は、布団にくるまりながらそっぽを向いた。 行為中に出来ない反抗を、私は今ここでする。 「なんでそんなこと言うんだい?」 「だって、いっつも言わせるじゃないですか!」 「言わせるって、何を?」 そう切り返され、思わず口ごもる。 ほら、こうやって私が言いずらいことを強要するのだ。 強要というよりも、そう言うように誘導すると言った方が正しいかもしれない。 そうやって、穏やかな口調で、私を操る。 「分かってる癖に……。」 拗ねる私を見て、進さんは楽しそうに笑った。 後ろから、急に抱きしめられ体がビクリと跳ねる。 大きなゴツゴツとした手が、腹周りを撫でる。 「ごめんね、はるが可愛いから、ついからかってしまう。」 「もうっ……!そうやっていつもはぐらかすんだから。」 こうやって、抱きしめられたら一瞬で拗ねてたことさえも忘れてしまいそうになる。 進さんの腕の中は、幸せすぎるのだ。 きっと、私が抱きしめたら機嫌を直すことだって、この人は知っている。 「でも、こうゆう俺の事、嫌いじゃないんでしょ?」 あぁ、本当にこの人は意地悪だ。 全部分かっててやっているのだ。 私の心も体も、すべて把握して、そして、簡単に誘導していく。 私の心も体も、すべて進さんの手の内にあるのかもしれない。 私は進さんの腕にそっとふれ、そして、小さく頷いた。 今日も、私は彼に翻弄される。 結局私は、意地悪されるのは、嫌いじゃないのだ。 イジワル <10.10.21>