しゅるりと背中のリボンに手がかかる。 はらりと、真っ白のエプロンが足元に落ちる。 くるりと身体の向きを変えられた。 博と目が合う。 少し恥ずかしくて、お互い笑い合う。 相変わらず、でへへっと笑う博が愛しかった。 「キス、していい?」 コクリと頷く前に、博の顔が近付いて、ちゅと淡い音をたてた。 優しいキスだ。何度も何度も啄ばむようにキスをする。 「ずっと、キスしたかった。触れたかった」 そうポツリと呟くと、私の服を脱がしていく。 時たま、ボタンでつっかえる博の指が少し震えている。 緊張しているのだ、博も。 ばさりと、ワンピースが床に舞う。 そして、下着もあっという間にはがしてしまった。 私は、慌てて胸を隠した。 「どうして隠すのさ!」 「だって恥ずかしいもの。…博だって座ってないで、脱いでよ」 「じゃあ、はるが脱がして〜。…って、待って。」 博は、裸の私をまたもやくるりと反転させた。 「やっぱり…残るよね…」 背中の傷を博に見られた。 もう何年も前のことだ。すっかり忘れていたというのに。 落ち込んだ声色の博に、胸が痛む。 私は斬られた事を、後悔していない。 むしろ、博を守れた事を誇りに思っているくらいだ。 「これは私の勲章なの。」 「勲章…?」 「そう!博を守ったっていう勲章。格好いいでしょ?」 私が威張ったように言うから、博は噴き出した。 少しすると、笑いも収まった。 「はる、ありがとう。」 「ううん。」 「はるの勲章、格好いいね」 「…ありがとう」 博が私の背中の傷をなぞるように、触れた。 いとおしむようなその動きに身体が、跳ね上がる。 「くすぐったい…っ」 博は私の言葉なんかお構いなしに、背中をなぞる。 優しく。優しく。 急に、後ろから抱きすくめられ、ベッドに二人でなだれ込んだ。 博が楽しそうに笑う。 「はる吉、脱がして〜」 こういう時、懐かしくて、可愛くて、何かが溢れそうになる。 博の服に手をかけた。 恐る恐るボタンをはずす。 「ちょっと寒いね」 「そうだね」 なんてことを言いながら、博の服が脱がされていく、私の手によって。 裸になった博が、照れくさそうに笑った。 私もつられて笑ってしまう。 部屋に、二人の笑いが響く。 「ずっと、君を…はるを抱きたかったんだ。」 「私も博にずっと触れたかった。」 「触って、いい?」 私は、頷き、目をつむった。 不安なんてなかった。 博に触れたい。 その想いだけで、生きれた。

の勲章 (文字だけじゃ、言葉だけじゃ、足りなかった。)

<10.09.27>